もんもんlog

発達障害関連と雑記。

なぜ痴漢をするのか。膜などなくとも。

Love Piece Club - どぶろっくと痴漢の関係 / 田房永子

この話は色々考えさせられるという点で凄く面白い。面白いけれども完全にこの人は勘違いしているんじゃないかって気がしている。以下私の考え。

 

まず膜。田房さんは痴漢が「俺の世界に女の方が入ってきた」というのを膜を持っていると表現しているけれども、膜があるというのがそもそも間違いじゃないかと思う。

例え膜があるにしても、それは半径1mなどというものではなくて、全世界、全宇宙、自分の持ちうる魂が認識できる全てに広がっているし、そもそもそれはそうなると既に膜なんかではなくて、自分自身なのではないかと思う。認識範囲を膜と表現しても良いかとは思うけれども。

まず基本ははじめに自分がいて、そして他人が生まれるの。自分の世界の中に。

だから性犯罪者だけが「特別に」膜を持っているという考えもハズレ。

世界は皆がそれぞれ個別に持っているものなの。だから犯罪者じゃなくても皆がそれぞれ膜(と表現するなら)を持っている。自分の認識している世界ってやつを。

それは幻想といっても良いし、概念であって、人の形をしたものはアバターなんだよ。ゲームで言うなら自分以外の他人はほぼ全員NPC(ノンプレイヤーキャラクター)といっても良い。

何故そう言えるのかって、例えばどこかの震災で1万人死んだとしても、1万人の個別の顔と人生を思い浮かべて我が事のように悶え嘆き悲しんだりしないでしょう?それは1万人という数字だから。ほぼ概念だから。それはNPCだから。

こんな事言うと感じ悪いから普通は誰も言わないだろうけれど、1万人が死ぬより自分のペットの犬が死ぬほうが身を切るように辛いよね。だってペットはNPCじゃないもの。ペットはPC(プレイヤーキャラクター)であって、中の人=実存を感じているから。きっとペットを飼っている人なら感じると思う。ペットの個別な意思と存在を。

そうではない、1億2千万人いる日本人の殆どを、私達は「だいたい普通の日本人」というアバターNPC)として認識して日々過ごしている筈。

本当のところは「だいたい普通の日本人」かどうかなんてわからないよ。どんな波瀾万丈な人生を送っているか、どんな変人さんか、どんな変態さんかもわからない。

でもみんな「わかっているつもり」で生活してる。NPC「普通の日本人」として都合よく認識ていられる。いちいち中の人の事なんて深刻に考えたりしない。真実は「わからない」んだけどね。でもそれで大丈夫。普通は、普通っぽい人の方が多いんだから。それを普通っていうんだから。

困るのは、そこに性犯罪者が混じっている時だけどね。

 Yは強姦をしようと女性を襲った際、狙いを定めて自分が襲いかかったにもかかわらず、被害者の存在に驚いたのだという。また、女性を拉致したり、女性宅に侵入した時、Yが彼女らの生活空間に侵入したにもかかわらず、彼女らがYの世界に入ってきたのだと語るのである (「刑事司法とジェンダー」より引用)

なぜ被害者がYの世界に入ってきたと言えるのか、それはNPCだった筈の女が 触ってみたらNPCではない動きをするから。睨んだり、嫌がったり、騒いだり、反撃したり。NPCだったら本当は触って欲しくてウズウズしていて触られたら喜ぶ筈なのに!

実は女はNPCではなかったんだ!痴漢してみたらNPCではなかった。強姦してみたら(彼の世界の中では和姦だけど)NPCではなかったんだ!彼女たちはPCだった!

PC(プレイヤーキャラクター)=中の人がいるアバターだったんだ・・・

性犯罪者はそこで初めて気付くんだ。彼女の個別な意思と存在を。

 

みんな普段は意識してはいないけれども、生きて存在している個別の人々に、自分の考えた世界観のアバターを被せて「だいたいこんな感じ」ということにしている。だって人間は世界の全ての個別の意思と存在を認識して処理できるほどの脳は持ち合わせていないもの。

 

それでも私達は幼子から子供になるまでに、母親が自分とは違う存在だと学習し、子供から大人になるまでには、色々な考え方の色々な人がいて、自分とは違う存在がそれぞれ生きているんだなぁって言うことを、実際の人間と触れ合って学習していく。

 

だけれども、残念ながら色々な人がいるっていう事を学習しないまま大人になる人はいる。

実際の女は触られたら喜ぶ女ばかりじゃないし、ちょっと指を突っ込んだら瞬間ぐしょぐしょに濡れて快感によがるって訳にはいかないし、激しく抜き差ししただけで気持ちよくなる訳じゃないし、そもそも知らない人に触られるのなんか御免こうむるっていうのなんか、全く知らないまま大人になっちゃっう男がいるんだよね。

みんなが自分の都合に合わせて認識している「だいたいこんな感じ」のアバターなんだけれども、それを高度に変な方向に都合よく強化してしまった男が痴漢をやらかしたりするんだよね。その高度に強化されたモノを「妄想」って言うんだけどね。

でも別に彼らが特別なんじゃない。妄想は幻想から生まれてるんだよ。そして幻想は皆が持っている。後はそれが実存とどれ位離れているか、どう表出するかっていう問題。学習と訓練の問題だ。

 

軽い妄想なら、「女は三歩下がって歩くのが当然」とか「彼氏は私の誕生日を絶対に忘れないしサプライズしてくれるのは当然」とか「女だったら料理はとりわけるのが当然」とか「男ならおごるのが当然」とかがあるよね。ほらね、みんな割りと幻想の中で生きてるのよ。

私だったら「お前絶対にB型だろ!」って言われたりね。そりゃあんたの勝手な妄想だっつーの。それはお前の頭のなかのアバターであり概念でありNPCであって、実物の私はA型で片付けは苦手で大雑把で宵っ張りで別に男に尽くそうとか思ってないっつーの!妄想を押し付けないで頂こうかな!!

 

世の中にはいろいろな人がいる。その中で「他人を正しく認識している」って事なんて稀だろうし、できていないほうが普通なんだろうと私は考えている。

それでも思ってるのと違う事もあるって分かるだろうし、妄想に対しては「さすがにそれは無いでしょ」って笑えたりもする。ドブロックのコントとかね。「そんな事あったりしてな~と思いつつソレは違うでしょと笑える」のが成熟して精神的に安定した大人なんじゃない?

「戦争ゲームしたからって実際に戦争したくなったりしませんよ」でもあるし、「昼ドラ好きだからって旦那を密室殺人したりしませんよ」って事でもあるよね。物語と現実は違うって事を知ってる上で楽しめるよね。

 

人間ってものは曖昧なものなのよ。完全に正しい訳でもなく、完全に正常であるわけでもなく、完全に間違っているわけでもないのよ。そんなもんなのよ。きっと。

 

 

終わりに

何故私がこういう風に考えるか。子供の頃から死を意識していたから。そして私は被災者だから。多くの死の数字を見、少しばかりの死と生を実感したから。そして私はずっと日本では変人で、人とは違うことを意識し、しかし留学し、人と同じ事を意識したから。「わかっている」は「わかっていない」だし、「誰かの普通」は「他の人の普通ではない」のを知っているから。そうやってずっと考えているから。

  とりあえず、今日はここまで。